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掌がしびれる

  • 執筆者の写真: Hiroshi Andoh
    Hiroshi Andoh
  • 2024年8月1日
  • 読了時間: 5分

更新日:2024年10月31日

先日、トライアスリートの方が両手の掌のしびれを感じるということでご来院されたのでそのことについてお話してみようと思います。

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ご自身の症状からネット検索をされたとのことで、たどり着いたのが「ギヨン管症候群」という名前。


「ギヨン管症候群」というのは、一般的にはまれな症状ではあるものの、サイクリストやトライアスリートのようにロードバイクなどに乗られる方には意外と似たような経験をお持ちの方が多いようです。


今回の症状を訴えた方は、トライアスロンのアイアンマンレース(スイム3.8㎞、バイク180㎞、ラン42.195km)に向けた練習で一日に200㎞以上の長距離をバイクで走られたときに、両手の掌にしびれを感じていて、ロングライドから数日経った今も少ししびれが残っているとのことでした。生活で特に困ることはないけれども、「そういえば最近瓶のふたを開けるときに少し開けにくいことがある」ともおっしゃっていました。


【なぜ、掌がしびれたのか?】

ではなぜ、このような症状がロングライドの時に生じたのか、それは掌の小指側の膨らみ(小指球)、手首のシワから2~3cm上のところで、反対側の手の親指で触れると触知できる骨(有鈎骨)の出っ張りを感じられる辺りが、長時間の自転車の運転で圧迫され続けたことが原因なんです。

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その圧迫を受け続けたところには、「ギヨン管」(変な名前ですよね。そういうのはだいたい人の名前(笑)。19世紀に活躍したフランスの外科医であるジャン・カサニ・デ・ギヨン先生の名前に因んだ名前だそうです。)という有鈎骨と豆状骨の間で解剖学的なトンネルになっているところがあります。そのトンネルには、尺骨神経という神経が通っていて(それ以外にも尺骨動脈、尺骨静脈も通っているので圧迫されると血流も滞る)、その神経が手や指の感覚や運動を司っているので、尺骨神経が支配している感覚や運動の関係で、手の小指や薬指のしびれや痛み、手の筋力低下が症状として現れるんです。似たような症状を訴えるものに、肘部管症候群というものもありますが、同じ尺骨神経が圧迫されますが、圧迫される身体の部位が異なります。肘部管症候群では手の甲側にもしびれが出ます。


神経は圧迫などの刺激にとても弱く、かつ長時間の圧迫や反復的な刺激により傷みやすく、一度傷んでしまうともとに戻りにくいので、気を付ける必要があるんです。

今回のような場合は、たまたまトライアスロンに向けたポイント練習でロングライドの負荷を受けただけなので、同じ圧迫刺激を受け続けないように安静にしている時間を取ってあげれば自然と回復してくると思うのですが、ひどい場合だとなかなか治りにくいですし、原因によっては外科的な手術を必要とする場合もあるんです。

でも、まだまだ本番のレースに向けて練習を繰り返すとは思うので油断なりません。


【どういう治療をしていくのか?】

そこで回復を遅らせないためのケア、予防のためのケアが必要となってきます。

ここからが私の出番です。私は日頃そのような手などの症状を訴える患者様に遭遇した場合には、必ずその症状に影響している神経などのルートの根っこに近い部分はどういう状態なのかを評価するようにしています。手の症状の場合は、首回りです。

特にトラアスロンなどのレースで取る姿勢は、どんなに良いポジションを取ったとしても首への負担が大きいと思います。今回の患者様も首の状態を確認すると、ストレートネックであったり、ある部分の首の骨の関節だけがよく動いていて、そのほかの部分の可動性が低下していたりします。そうすると、同じルートの根っこに近い部分の神経や血管がすでに圧迫されやすい状態が見受けられることが意外と多いんです。

今回の場合も、首の状態を確認しながらお話していたところ、「首の凝りもなかなか取れない」という訴えが後から追加で出てきたりします。ご本人は今回のこととの関係性があるとは一切思わないですもんね。

でも、ちゃんと順を追って原因となる可能性を説明をすれば患者さんも納得してくれたりします。


同じ神経のルートで傷んでいるところがある場合、その神経自体が脆弱な状態に陥っているため、そこよりも先(今回の場合は首よりも先)で神経が痛みやすい状態が生じていると考えるんです。このように同じ神経のルートで複数のダメージを受けて神経症状が増強いている現象を、ダブルクラッシュシンドロームと言ったりもします。


今回の評価から、私は首から手にかけての治療を進めています。

症状の出ている部分への局所的なケアと、ルート全体へのケアになります。

もちろん、整形外科への受診も促すわけですが、私が治療家としてできる治療やケアは今回の評価で気になった部分を少しでも良い状態に整えていくことになります。

手を使い、鍼を使い、姿勢を調えたり、バイクに乗っているときの負担が軽減できるポジションも一緒に考えていったりもします。


是非、本番のレースで症状が再燃しないように患者さまと一緒に頑張って行きたいと思っています。


困ったことは何でも気軽に相談して下さい。

何かお手伝いできることがあるかもしれません。



荻窪鍼灸治療院SORA

安藤 浩

 
 
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