top of page
検索

鍼灸で免疫力が上がる

  • 執筆者の写真: Hiroshi Andoh
    Hiroshi Andoh
  • 2024年8月8日
  • 読了時間: 6分

更新日:2024年10月31日



鍼灸が免疫力の向上に効果をもたらすという話は、最近テレビの放送などでも東洋医学や鍼灸の話を取り上げられる機会が増え話題になることがあります。

様々な研究によってそのメカニズムが明らかにされてきているんです。


いくつかの研究では、鍼灸が免疫系に与える具体的な影響が観察されています。

例えば、ある研究では鍼灸治療を受けた被験者の免疫細胞の活性が有意に増加したという報告がされていたり、風邪やインフルエンザの発症率を低下させる可能性などが示唆されていたりします。


では、なぜ鍼やお灸の刺激が免疫機能に作用するのか?というお話をしてみようと思います。


免疫機能は大きく2つに分けられます。

自然免疫:生まれつき身体に備わっていて一番最初に反応する

 好中球やNK細胞、マクロファージなどがあります。

獲得免疫:異物の侵入に応じて後天的な免疫反応をみせる

 主にT細胞やB細胞などのリンパ球が含まれます。



これらの免疫の機能に鍼灸が作用するいくつかのルート(①~➅)があるんです。

そのルートこそが鍼灸刺激が免疫に作用する機序になってきます。


●局所での免疫作用

①微細な細胞の損傷を修復しようとする働き

鍼が刺さったりすると、皮膚や皮下の細胞が目に見えないレベルで微細に傷つきます。するとその場所に自然免疫のマクロファージや好中球、NK細胞などが集まり、損傷した細胞を処理して修復しようとして炎症反応が起こります。その反応をわざと起こさせるのが局所的な鍼灸治療に応用されます。


②軸索反射

鍼やお灸をした場所の鍼灸刺激が皮膚や筋肉の感覚受容器を介して軸索にある小さな分枝を介して本来の進行方向である脊髄の方向とは逆行し再び皮膚の表面近くにある感覚神経の末端を刺激することで、神経の末端からサブスタンスPやCGRPと呼ばれる神経伝達物質が放出されます。その神経伝達物質が周囲にある血管に作用することで、血管を拡張させたり、血管の透過性を高める作用があります。この鍼灸刺激から生じる一連の反射を「軸索反射」と言い。血行不良に由来する肩こりや筋肉の痛み、むくみなどの治療に応用されています。


●全身を介しての免疫作用

③HPA軸と免疫機能

「視床下部ー下垂体ー副腎皮質系」(HPA軸):外部からの物理的な刺激や心理的ストレスから心身を守るために「闘争 or 逃走(fight or flight)」を行う本能的なメカニズム。

外部から神経を介して脳の視床下部にストレス刺激入ると、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を分泌し、ついで下垂体から副腎皮質ホルモン(ACTH)が分泌され、さらに副腎皮質から副腎皮質ホルモンが放出されるというメカニズム。

慢性的な炎症や、ストレスが続きこのHPA軸が活性化した状態が続いてしまうと、慢性的に副腎皮質ホルモンが分泌され続けることになり、高血糖による肥満や糖尿病のリスク、またうつ病や免疫機能の異常をもたらします。

鍼灸には、このHPA軸の過剰な活動を抑制する効果があるといわれています。


④SAM軸と免疫機能

「交感神経ー副腎髄質系」(SAM軸):自律神経が関わる心身を守るためのメカニズム。

脳の視床下部に入った刺激が副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を分泌するところまではHPA軸と同様。その後、自律神経の一つである交感神経の活性化を経て、最終的に副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンを放出させるメカニズム。

このメカニズムにより心拍数を上昇させたり、血管を収縮させたりしてストレスに対する身体の活動性を高めて心身を守ろうとします。

鍼灸の刺激は、与える刺激量によってこの活動性の抑制にも活性化のどちらにも作用するといわれています。

皮膚への撫でるような優しい刺激では抑制に、痛みを感じるような強い刺激では活性化に働くといった感じです。


⑤炎症反射

迷走神経と脾臓を介して起こる抗炎症反応

脾臓は、獲得免疫であるT細胞やB細胞が集まる臓器。

迷走神経は、脳から全身の臓器や血管などへ情報を伝える遠心性迷走神経と、臓器や血管などから脳へ情報を伝える求心性迷走神経とで構成されます。

身体内の臓器や血管などの免疫情報が、全身の臓器や血管に張りめぐらされている迷走神経の求心性迷走神経のルートで脳の脳幹という部分に伝わり、ついで反射的に遠心性迷走神経のルートで脾臓に届けられます。

身体の中で生じている炎症反応が過剰な場合、脾臓に送られた指令によってノルアドレナリンが分泌され、これにT細胞が反応しアセチルコリンというホルモンが分泌されます。

そうすると、アセチルコリンが血流を介して全身に行きわって、自然免疫のマクロファージの活動を抑制し、炎症性サイトカインTNF‐αの産生が減少することで炎症反応が抑制されるといったメカニズムです。このメカニズムを「炎症反射」といいます。


迷走神経の枝が分布している耳介への電気刺激により脾臓での炎症反射が増強することが確認されており、炎症反射を促して炎症性の治療を行うtaVNS(transcutaneous auricular Vagus Nerve Stimulation)経皮的耳介迷走神経刺激療法を応用して、鍼灸の世界では耳介に鍼通電療法を行う治療が行われています。日本でも、この治療法を活かして関節リウマチなどの自己免疫疾患や、糖尿病、アトピー性皮膚炎、認知症、血管障害などの慢性炎症疾患を未然に予防しようという予防医療へのチャレンジの動きがあります。


⑥足三里という経穴を介した抗炎症反応

(足三里ー迷走神経ー副腎髄質)

足三里という経穴(ツボ)は足のすねの部分にある様々な効能を示す経穴として有名ですが、免疫作用にも効果をもたらす経穴としても有名です。

副腎髄質は副腎の中心にあり、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンというホルモンを分泌する。

足三里を介して伝わる鍼灸刺激は、炎症反応とは全く異なる経路を通ることがわかっており、坐骨神経を通った後、脊髄に入り求心性迷走神経を経由して脳幹へと伝わり、その後反射的に遠心性迷走神経へと伝わり、その刺激は副腎髄質を活性化することがわかっています。副腎髄質で分泌されるドーパミンが血液を介して全身のマクロファージなどの免疫細胞の活動の抑制に作用して、炎症反応を抑えることがわかっているんです。


昔から行われてきた伝統的な鍼灸治療も、今となって後から明らかになってきたことではありますが、実はこういった科学的、医学的な根拠に基づいた治療となっており、現代に脈々と受け継がれてきたものだと思うと、昔の治療家の方々の積み上げてきたものの偉大さを感じざるを得ないところがあります。

私たちも日々患者様と真摯に向き合い、今までもこれからも続く臨床の場での経験を後世に受け継げるような形にしていけるよう頑張らなくてはいけないな、と気が引き締まる思いです。


今日のお話が鍼灸治療に興味をもっていただける一つのきっかけになればと思います。

是非、当院で鍼灸治療を体験してみてください。



荻窪鍼灸治療院SORA

安藤 浩


 
 
SORAロゴ写真1
  • Instagram
  • Facebook

荻窪鍼灸治療院SORA

〒167-0043

東京都杉並区上荻1-18-7 オギヨンビル302

Tel: 090-7246-5538

営業日時

月曜から土曜日 : 9:30 – 21:00 

​日曜、祝日はお休み

新緑と空.jpg

©️2024 by 荻窪鍼灸治療院SORA. powered and secured by コウキ写真デザイン事務所

bottom of page